重要なシーンでは必ず複数枚撮影する

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 ブライダルの撮影をしていた時、発注元から要求されたことの一つに「重要なシーンでは必ず2枚以上撮影して欲しい、しかし同じ写真は2枚以上撮らないで欲しい」というものがありました。一見矛盾する様な要求ですが、これが出来ないとブライダルの撮影は難しいと思います。今日はそんな話をしてみたいと思います。

 まず前段の「重要なシーンでは必ず2枚以上撮影して欲しい」ですが、これは様々なリスクを回避する為にあります。一般的にシャッターを切ったら写真が1枚撮れる訳ですが、機械的な故障でシャッターが動かないこともあるかもしれません。

 他にもピントを合わせたつもりが合っていなかったといったカメラマンの責任である事故だけでなく、メモリーカードへの書き込みエラー、絞りレバーが動かなくて写真が露出オーバーやアンダーになるといった機械的トラブル、フィルムカメラなら現像所のミスによる現像失敗まで写真が残せないリスクは想像以上にたくさんあります。

 そこでそれらのリスクを軽減する為に現場では同じシーンで2枚以上の写真を撮影することが必須になります。更に言うとそれを2台のカメラで行うことにより例えば機械的故障で1台が全く動いていなかったといった最悪の事態(このレベルになると流石に「気付けよ!」という話ですが)でも最低限の写真は残せる様になります。

 そうした理由からブライダルを撮影する職業カメラマンは同じシーンで2枚以上写真を残しておく様に撮影します。

 一方後段の「同じ写真は2枚以上撮らないで欲しい」はフィルム時代には特に重要でした。一般的に結婚式のスナップは「300カット以上撮影しますよ」とカット数(枚数)で契約します。そしてカメラマンはボツカットを考慮して2割位多めの枚数を撮影しておきます(中には倍位撮影してくれるカメラマンもいます)。

 ここで前段のリスクを考え同じ写真を2枚ずつ撮影したらお客様は300カット撮影して貰っても150種類の写真しか貰えないことになります。これでは「もっといっぱい撮って欲しかった!」とクレームになってしまいます。

 そこで同じシーンを複数枚撮影する時は構図を工夫して同じ写真にならない様配慮しました。こうすればお客様はバリエーションある写真を楽しめますし、万一の事故の時でもそのシーンは確実に写真として残せます。

 「機械の故障や現像所のミスはカメラマンの責任じゃ無い!」との言い訳は通用しません、結婚式などは究極のやり直しの効かない特別な日とも言えます。ですから想像できない様なハプニングが起こっても、最低限の写真が残せる様リスク管理をするのもカメラマンの重要な役割であったりします。

 当時の人の結婚式の写真を公開する訳にもいきませんので、先日ドール撮影をしてきた写真で今書いてきたことを解説してみたいと思います。

 一般的に人物撮影の場合縦位置が被写体を大きく写せてしっくりくると思います。「展望台から遠くを眺めている写真」となると一般的にはこんな感じになると思いますが、この1枚で「撮影できた!」と安心してはいけません。

 そのままズームしてカメラを横位置へ持って行くとこんなカットが撮れます。人物の占める面積は減りますが、その分背景の情報が多く入り「どんな場所に行ったのか」が分かる写真になります。

 これで2枚撮影しましたので万一書き込みエラーで1枚の写真がダメになっていてもこのシーンは残せる訳です。

 更にアップにして少し上側から顔の表情を見せる写真を撮影してみました。

 この様に縦構図、横構図、アップ、引きを組み合わせて同じシーンでも異なる雰囲気の写真を撮影しておけば確実にそのシーンは残せますし、同じ写真が何枚もあるといったつまらなさも回避できます。

 「複数」というのは重要なシーンの撮影ではとても大切な考え方で、デジタル時代になるとまた新たなリスク管理の方法が生まれてきます。一例を挙げると撮影が一段落した時点でデータをUSBメモリーや外付けSSDなどにバックアップしておく、ダブルスロットのカメラを使うなどの方法です。

 私はダブルスロットのカメラで一方をRAW、もう一方をJPGで保管しています。RAWの高画質は確かに魅力ですが、万一の際のJPGの復旧率の高さも無視は出来ないので、現在はこの様な保存方法を私は採用しています。

 普段のスナップでここまで考えるとくたびれてしまいそうで私も勿論やっていませんが、大切なシーンを撮影する際の参考にして頂ければ幸いです。

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